盆踊りを、
楽しむ、正一郎とクミ。
クミ「結構、人が出てるわね。」
正一郎「ああ。」
すると、隆の家族も盆踊りを見ている。
それに気づいた正一郎は、
正一郎「そろそろ、帰ろう。」
クミ「ええ、もう帰っちゃうの?」
正一郎「もういいよ。」
しかし、隆のほうも正一郎の存在に気づき、歩み寄る。正一郎もその場を離れられない。
隆「お兄さん。」
正一郎「なんだ、来てたんだ。」
隆「ねえ、こんなにやかましいと、あのやぶのタヌキたち、びっくりして来ないかな。」
正一郎「うん。そうだね。喜んで浮かれて、一緒に踊ってるよ。きっと。」
隆「ええ。まさか。信じられないよ。今夜は、やぶの中にじっとしていて、えさもとりに出ないと思うな。ぼくは。」
正一郎「まあ、1年に一度くらい、勘弁してもらうんだね。」
隆「タヌキのほうが、1年中、静かにしているのにね。やっぱり、損するのタヌキだね。それでも、文句言わないのすごいね。」
クミ「タヌキを飼うのは、もうあきらめたのね。」
隆「うん。その代わり、世界的なタヌキ学者になる。」
正一郎「期待してるよ。隆。」
澄江「隆、行くわよ。」
隆介「隆の父親です。」
正一郎「はあ。」
隆介「子供がいろいろとお世話になりまして、」
正一郎「いえ、ぼくは別に。」
隆介「明るくなりましてね。父さん、ここはいい街だね、なんて言うんですよ。本当にありがとうございました。」
正一郎とクミは微笑んだ。