第3話「タヌキと住む街」


ストーリー(6)

正一郎が働くコンビニに、

隆がやってくる。

正一郎「タヌキ、見たことある?そばで。」
隆「タヌキ?本物の?」
正一郎「もちろんさ。生きてるタヌキさ。」
隆「見たことない。」
正一郎「見たい?笑っちゃうよ。」
隆「うん。」

正一郎は、タヌキに興味を持った隆をタヌキの元へ連れて行く。

隆「うちで飼えるかな?」
正一郎「それは、難しい。」
隆「難しいことやってみたい。」

その夜、隆の家では、

大変なことになる。

隆と、澄江(隆の母)とで口論となる。

澄江「何を言い出すの?タヌキを飼うなんて。」
隆「母さんだって、犬飼ってるじゃないか。」
澄江「犬とタヌキはわけが違うわ。」
隆「お風呂入れて、きれいにする。ぼくの部屋で世話する。ぼく、タヌキと暮らしたい。」
澄江「隆ちゃん。あなた、今、そんなこと考えてる場合じゃないでしょ。来年、中学受かったら ...」
隆「タヌキ飼っちゃいけないなら、塾も行かない。中学も受けない。絶対。」
澄江「隆ちゃん。」

隆介「ちょっと、待ちなさい。」

隆介(隆の父)が澄江を呼び止める。

隆介「だめだよ、あんなに興奮してちゃ。今は、何を言っても聞かないよ。」
澄江「あんな、わけのわからないこと言う子じゃなかったのに。」
隆介「どうやら、本気のようだな。」
澄江「あそこの店員にそそのかされたのよ、きっと。かわいそうなタヌキだから飼ってやれとか。」
隆介「くたびれてるんじゃないかな。あいつ。すこし、塾、休ませたらどうだ。」
澄江「なに言ってるの?来年、日本中で一番難しい中学受けようって言うのよ。」
隆介「その本人が、タヌキ飼ってくれなきゃ、塾も行かない。中学も受けないって宣言だ。」

澄江「一時の気の迷いよ。タヌキなんか見せられたから。」
隆介「そうかな。じゃあ、うちのすぐ近くまで帰って来てて、会い食いなんてしてたあいつをどう理解する?赤提灯やるくたびれた中年男と一同じじゃないか。」
澄江「お友達にでも誘われたんでしょ。」
隆介「あいつ、友達いるのか?」
澄江「勉強も出来るし、友達づきあいもいいって、いつも先生に褒められてるわ。あなたほど、飲み友達が大勢いるかどうかは分かりませんけどね。」
隆介「友達大勢でわいわいなんていうのは、まだ救われるんだが。」
澄江「そんなことまで、見届けられないわ。あの子はもう私の手を離れて、一人歩き始めたのよ。ともかく、来年春、受験さえ済めば、あの子もノーマルな状態になるわよ。あと、半年とちょっと。」
隆介「さあ、どうかな。このままじゃ、もっと厳しい、競争社会へ追い込まれていくじゃないのか。」
澄江「じゃあ、どうしろっておっしゃるの?言っときますけどね、中学受けたいって言い出したのは、あの子のほうなのよ。わたしがそそのかしたんじゃないわ。先生にも太鼓判押されて、張り切ってるのに。私だって、応援しないわけには行かないでしょ。なによ、いつもほったらかしの癖に、たまに早く帰ってきて、分かったようなこと言わないでちょうだい。わたしだって、あの子のこと心配なのよ。不安なのよ。でも、そんな様子出せないから、一生懸命耐えているんだから。いつもひとりぼっちでね。」
隆介「さし当たって、タヌキのことどう言い聞かせるかだ。あいつ、人間の顔見るのいやになってるんだよ。なんだか分かるよ。」
澄江「あそこの店員に責任とらせましょうよ。つまらないことしてくれたもんだわ。怒ってやるわ。」

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