第2話「SOSの届く街」


ストーリー(7)

あたりは、夜。

隣の有岡宅では、主人の泰三が帰宅し、新聞を読んでいる。記事は、「83歳女性、孤独な死」

とし子は、泰三に、夕方のけんかの件で相談する。

とし子「あの子達、けんかばかりしてこまっちゃう。」
泰三「一時期、しょうがないな。」
とし子「みっともなくって。お隣に、聞こえやしないかって。」
泰三「うるさきゃ、文句を言ってくるだろう。隣は、どういう人なんだ。」
とし子「優雅に一人暮らししている奥さんみたいよ。時々、外人さんも出入りしているみたいだし。特別静かなうちと、特別やかましいうちが隣り合わせなわけ。」

泰三は、隣人に興味をもちつつも、深入りしようとはしなかった。

篠崎宅と、有岡宅とは反対側の隣のうちでは、一人の男性が電話をしている。

隣人に気を留める様子はない。

階下の部屋では、赤ちゃんの母親である、千葉節子が帰宅して、ワープロを取り出し、在宅で仕事をしている。

礼二(赤ちゃんの父親)「ここのところ、毎日時間ちょうどだ。給料のほとんどが、家賃とベビーシッター代に持っていかれるんじゃばかばかしいよ。」
節子「仕方ないわよ。」
礼二「君も大変やろ。家まで仕事もって帰るんじゃ。ねえ。お袋に頼もうか?忙しい間だけでも。」
節子「そんな、お母さんのほうが続かないわよ。こんな、友達もいないところにきてごらんなさい。たちまち、ノイローゼよ。住み慣れたところで、友達とわいわいやっているから、元気なのよ。」
礼二「でも、孫のお守りなら出来るんじゃないかな。」
節子「あなた。理香を産むとき約束したじゃない。なんとか2人でやって行こうって。このくらいのこと、覚悟の上でしょ。」
礼二「そりゃ。そうだけど。ベビーシッターなんて赤の他人に頼むより、実のおばあちゃんのほうがいいんじゃないかな。」
節子「やめて、そんな考え方。一歩後退だわ。あたし、あなたのお母さん、いいお母さんだと思うけど、理香を育ててもらいたいとは思わないわ。」
礼二「お袋は、たしかに田舎もんだ。やりかたも古いかもしれんが、孫はかわいがるだろう。」
節子「そんなことより、わたし、煩わされるのいやなのよ。あなただってそうでしょ。ちょっと、家賃は高かったけど、ここで住みたいって言ったのもあなたじゃない。人間関係のうるさくない感じが何よりいいって、お母さんなんかに来てもらったら、わたし、気遣いでくたびれちゃうわ。お金で済むことだったら、ベビーシッターのほうがよっぽど気楽よ。理香はちゃんと育てて見せるわ。」

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