第1話「大山の見える街」


ストーリー(2)

松原家の向かいに住むのは、柴山家。

礼子「はい、お薬。お昼の分ね。」
省吾「効くのかね。果たして。」
礼子「そう言わないで飲んでよ。日本の医学信じるしかないでしょ。向こうから戻ってきたとたん。体中、赤信号だらけなんだから。」
省吾「とにかく、日本は、忙しすぎる。不景気風吹いたとたん。呼び返されるなんて言うのも運が悪い。」
礼子「明日は、ゆっくり、家で休むといいわ。少し顔色悪いから。」


柴山家の主人、省吾は、外国から帰国したばかりの会社員。日本に戻ってから体調が悪いようである。

ケイ「お向かいのあの古いおうちの婆ちゃん、また何か拝んでいるよ。」
省吾「昔の日本人は、何でも拝むんだ。」 ケイ「お寺もお宮もないのに、いったい何を拝んでいるのかしら。」

窓から、かやぶき屋根の家のほうを見ている女性は、彼女。やはり、婆ちゃんが拝んでいることに関心があるようだ。

きえは、嘉一の娘で、高校生である。

きえ「(弁当を見て)いやだー。またごはんこんなにたくさん。」
もと子「そのくらい食べなきゃ。」
きえ「お昼食べない子だっているんだよ。」
功一「悪あがきはよせ。ちょっとやちょっとやせたって、美人にはなれないよ。」
きえ「お兄ちゃんだって、格好ばかりつけているくせに。お向かいに、かわいい子が越してきたからでしょ。」
功一「なに言ってるんだよ。」
きえ「目つけてるんじゃないの?」
功一「タイプじゃないよ。あんなの。毎日、人のうちのほう、ジロジロ見やがって。」
きえ「は。やっぱり気にしてるんだ。」
功一「気にしてるのは、向こうだよ。もっとも、屋根に草が生えているような家、珍しくて、見飽きれんだろうけどさ。」
きえ「外国から、帰ってきたみたいだよ。表札も英語だし、英語、ぺらぺらしゃべりながら、外人のおんなのこと話してたの。まあ、お兄ちゃんの相手じゃないね。」
功一「英語しゃべれればえらいのかよ。で、親父、さっきの話だけどさ、竹やぶを駐車場にする計画、どうしても実現させて見せる。」

松原家の爺さん婆さんは、畑仕事。

とめ「きえちゃん。いってらっしゃい。」

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