“人がいました。”
男性と、剣玉をしている男性の孫息子と、孫娘がいる。
すると、初老の女性がやってくる。
初老の女性「あら、こんにちは。」
男性は、初老の女性との会話に夢中だったので、母親は、帰ることに。
“私にも、あんなお父さんがほしいと、ふと思いました。なんだか急に、寂しくなりました。”
母親が帰ろうとすると、龍之介が走り出す。
母親「龍くん。ちょっとだけよ。」
遊具のほうに、龍之介が走っていく。
万紗美の祖母「万紗美ちゃん、あんま高いところ行っちゃだめよ。」
(母親のほうを向いて)
万紗美の祖母「おてんばで。おんなのこなのに、お人形なんて、見向きもしませんでね。こんなところが好きで、将来、体操の選手にでもなるつもりですかね。おたくは、坊ちゃんなのに、おとなしそうですね。」
母親「いいえ。狭いうちのなかで、暴れられても、困りますから。雨が上がるのを待って出てきました。」
しばらく話していると、万紗美の母親が公園に戻ってくる。
万紗美の祖母「万紗美ちゃん、ママよ。」
万紗美の母親「ねえ、お願い。もう1時間見てて?」
万紗美の祖母「何言ってるの、だめよ。俳句の会があるって言っといたでしょ。」
万紗美の母親「ちょっと、買い物に行きたいのよ。1時間、かからない。頼むわよ。お願い。」
万紗美の祖母「買い物くらいなら連れて行きなさい。」
万紗美の母親「だって、荷物もあるし。見ててよ、ちょっとだけだから。」
万紗美の祖母「私は、今日、お茶の当番なのよ。早めに行かないと。」
万紗美の母親「そんなの、誰かが代わってくれるわよ。ね、お願い。」
万紗美の祖母「だめだめだめよ。待ちなさい。万紗美ちゃん、早く、ママと一緒に行きなさい。」
万紗美の母親、足早に立ち去る。
万紗美の母親「頼むわね。。」
万紗美の祖母「もう、勝手なんだから。」
母親「龍くん、行こう。」
(龍くんと母親が手をつないで、)
母親「わたし、もう帰りますので。」
万紗美の祖母「あら、そう。奥さん。ぼっちゃんには、いいお嫁さん、めぐり合いますね。親は、威張ってなきゃだめですよ。」
母親「はい。龍くん、バイバイは。」
龍之介「バイバイ。」
万紗美の祖母「バイバイ。」
“誰もいないだろうと思った公園に、わたしが欲しくてたまらない、お父さんとお母さんがいました。お父さん、お母さん、長生きして欲しかった。龍之介に剣玉を教えて欲しかった。”
“龍之介のお守りのことで、喧嘩がしてみたかった。”
“お母さん、お父さん。”
“心の中で、呼び続けました。”