第4話「公園の多い街」


ストーリー(2)

“あの朝の乾杯に励まされ、私は、お休みの日、あっちこっちの公園に行ってみることにしました。”
母親「龍くん、公園行こうか?」
“子供は、かならずうなづきます。でも、本当は、私が行きたいんです。人に逢いに。”

“その日は、10数える前に、信号が変ったら、右。10以上だったら、左へ。あてずっぽにいってみることにしました。”
“1,2,3,4,5,6,7。”
“信号が変りました。右へ行きます。”
“どっちへ行ったとしても、必ず公園はあるんです。私の住んだ青葉区は、とても、公園の多い街でしたから。”

公園に到着。

母親「わあ。龍くん。お友達がいっぱい。」

龍之介(龍くん)は、砂場のほうにかけていく。

“私もわくわくしました。私は、お母さんのいるほうに突進です。お友達になりに。”

*「もやしの根っこなんて、いちいち取ってられないよね。」
*「あたりまえよ。そんな。」
*「めんどくさい。」

横のベンチに、若い母親は座る。

ふと、若い母親のとなりに、別の子供のお母さんが座る。

*「あら、初めてね。この近く?」
母親「ええ、越してきたばっかりなんです。」
*「よろしくね。」
母親「こちらこそ。私ももやしの根っこなんて取れませんから。」
*「仲間が一人できたじゃない。」
“もう、みんなとお友達気分でした。”

しかし、話し始めるもつかの間、別の親子が公園へ。

別の親子「こんにちは。」
*「あら、しばらく見えなかったわね。」
*「風邪でもひいてお休みかと思ったわ。」
*「どうなさったの?」
別の親子「ありがとう。ご心配かけました。」

関心は、別の親子のほうへ。

別の親子「実はね、しばらく、お呼びがかからないと思っていたら、やっぱり、今日で、お払い箱なの。わたし、」
*「え、何で。どうしてなの。」
別の親子「みなさんに、さよなら、言いに来たのよ。長い間、いろいろ、ありがとうございました。なかよく遊んでいただいて。あのね、もっと、若いベビーシッター見つけたらしいのよ。家庭教師も出来る人。」
*「え。家庭教師?」
*「それ、どういうこと?」
*「だれのかしら?」
別の親子「もちろん。このおじょうちゃんのよ。3つになってからじゃ、もう遅いんです。ことに英語はね。早くから、耳に入れて、なれさせておくと、有利なんですって。今度のベビーシッターは、このおじょうちゃんに、英語で話しかけるってわけよ。あたしには、そんなこと出来ないし。公園で遊ばせるくらいさ。失格。」

公園にいた親、愕然。

別の親子「本当に、いろいろとありがとうございました。また、どこかで、お目にかかるかもね。みなさんもお元気で。じゃあ。ばいばい。」
別の子供「バイバイ。」
*「バイバイ。元気でね。さよなら、お元気で。」

*「3つからじゃ遅いなんていったら、うちの子、もうすぐ4つじゃない。」
*「みんな、やってるんだ。もう。」
*「こんなところで、のんきに遊ばせてると、おいてかれちゃうわね。」
*「おいてかれちゃう。おいてかれちゃうわよ。」

母親「...」

*「やってみる。私たちも。みんなでさ、だれか先生頼んで。」
*「そうね。それもいいかもね。」
“わたしは、一人、取り残されてしまいました。”
“お友達と思った人たちは、たちまち、別世界の人に、なってしまいました。”
“わたしの胸は、寂しさでいっぱいになりました。”

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